神戸在住

神戸在住(10) <完> (アフタヌーンKC)

神戸在住(10) <完> (アフタヌーンKC)


あえて10巻を。
前々から視界のすみっこにちらちらしてる漫画ではあったんだけど、今回ネカフェではじめて手にとって、これは買わねばならぬ漫画だ、というわけでAmazonで一気買い。あえてありがちな言葉で表現してみると、神戸の大学で美術を学ぶ主人公辰木桂の視点から、個性あふれる友人たちと繰り広げる日々を紡ぐ、といった感じ。
コマとコマの合間に入る主人公の独白が、独特のテンポを生みだしていて、細々とした感情の機微が伝わってくる。
また、神戸という街に起きた「震災」についても度々言及される。未だ当時の傷を抱えて生きているものは多いということだろう。僕も高校から大阪に住みはじめ、時折友人たちが震災について語るのを聞いた。当時を知らない僕にとって、その話題は軽々しく触れてはいけないタブーのように感じたものだった。


読者は神戸での主人公の大学生活を、その日々の感情を追いながら追体験することになる。ありがちだが、もうそろそろ大学生活を終える身としては「こういうやり方もあったのだ」と、今更ながらに後悔することも。
何より、濃密な友人関係を得る主人公の辰木に、少し嫉妬するのだった。本当に、誠実さというのは重要だ…。